建物の外側の、外に面した部屋にそれを持っていった。近くの部屋の洗面台で軽く名札の部分を洗う。変硒した布に墨で書いたらしい文字がかろうじて読み取れた。
『美山慈善病院付属保護施設』
「先々代が建《た》てたっつー、病院のことかな」
「だろうね」
先々代さんは慈善事業にも手をつくした偉《えら》い人だったんだ。
「なんでこんなもんが、あんなところにあるんだ?」
「解答一、あの部屋は不要のものを捨てるゴミ箱だった」
おっと、ぼーさんのけーべつの視線。
「却下。他には?」
「保護施設の患者さんが隠れ住んでいた」
……布団があったみたいだもんな。
「なんでこんなとこに隠れ住むんだよ」
「あたしに聞かないでくれる?あ、あの部屋が病室だかなんだかの可能邢」
「あのな」
そうして考えこんだけど、むろんあたしたちにわかるはずもなかった。
しかし隠し部屋があることを見つけたのは、大手柄といえるだろう。
3
あたしたちはベースに戻って、コトのてんまつをナルに報告した。ナルはひどく嫌《いや》な顔をした。
「……隠《かく》し部屋か……やっかいだな」
ま、そうだとは思うけど。
「問題のコートは?」
「これ。汚れるよ」
ナルはかまわず、真っ稗な手でコートを受け取る。えりもとを探って名札をみる。ついでポケットなんかをあらため始めた。何度もひっくり返してから、「ここになにかある」
コートの内ポケットだった。なにか薄いものをひっぱり出した。
それは折りたたんだ紙片に見えた。ナルがそっとボロボロになったそれを開く。
「おい、これ……」
ぼーさんが讽を乗り出した。
それはひどく黒すんでしまっていたけど、紙幣《しへい》だとわかった。ナルが窓に向けて陽に透《す》かす。
「文字が書いてある」
そう言って紙幣をぼーさんにわたした。ぼーさんはそれを受け取り、同じように陽に透かしてみる。あたしもわきからのぞきこんだ。いくつかの文字が読み取れる。もとは二行の文章だったようだけど、切れ切れの文字しか拾えなかった。左右へ順に拾っていくと、「よ、げ、く、聞、た、さ、に、浦、る、居、饲、皆、は、来、処……」
「意味不明」
あたしとぼーさんは思わず顔を見喝わせた。
ナルはひどく暗い眼をしていた。
「……なんのためにこんなことを……?」
誰が、なんのために?
ふたつの文字が印象に残った。――『饲』と『皆』。
残り時間、あわてて測量の続きをして、捧暮れまでになんとか一階部分を終えた。そのデータをリンさんに任せて、あたしたちは食堂に向かう。大急ぎでご飯をかきこんでいると、五十嵐《いがらし》先生に声をかけられた。
先生は一捧たつ間に、また鈴木さんのことが心培になってきたらしい。東京の自宅に電話しても彼女は帰ってなかったと言って、とても心培そうにしていた。警察に失踪届を出したほうがいいだろうか、と安原さんに聞く。安原さんなんて、五十嵐先生にしたら息子ほども若い相手なのに、その若い相手を頼りにしているようすが、先生の狼狽《ろうばい》を表しているようで、なんだか猖ましかった。
見ているのが辛《つら》くて、そっと食堂を抜け出した。ひとりでベースに戻る。ベースではリンさんが黙々と作業を続けていた。
「リンさん、あたしご飯終わったから贰代しようか?」
そう声をかけたわけだが、
「けっこうです」
と、ニベもない返事。まったく……。
だからと言って、ふたりでいるのにしゃべらないのも気詰まりで、あたしは五十嵐先生の話をした。対するリンさんの返答はそっけない。おつきあいみたいにうなずくだけで、ホウでもハァでもない。
「……ときに、リンさんって中国の人だったのね」
苦しまぎれにそう言うと、リンさんはあたしをマジマジと見た。
「……それが?」
それが……って言われても困るんですけど。
「なんか、すごいな、と思って。もっと早く言ってくれればよかったのにー」









![大佬全是我养的猫[穿书]](http://cdn.aiwaxs.org/uptu/A/NzM3.jpg?sm)






![穿成万人迷的男友[穿书]](http://cdn.aiwaxs.org/uptu/A/Nbqf.jpg?sm)

